絵本はイラストと文章のあるものばかりではありません。少し対象年齢が上がると挿絵程度になってくることはありますが、中には文字がなくイラストだけでできている絵本もありますね。文字がない絵本のメリットとはどのようなことでしょう。おすすめの絵本とあわせてご紹介します。
目次
ストーリーを語る文字がない絵本、そのねらいとは?
子どもに絵本を読み聞かせる年齢であれば、文字がないために自然と親子の言葉や会話が増えることでしょう。
はじめは大人の方が戸惑い、どんな風に読み聞かせたらよいのかと困ってしまうかもしれません。
子どもは文字がなくても自分の想像の世界を膨らませ、ストーリーを作っていくでしょう。
このように、文字のない絵本は親子の会話や子どもの想像力を刺激することをねらいとしています。
探してみるとイラストのみで文字のない絵本はいくつもあるものです。
時には気分を変えて選んでみたいものですね。
読み聞かせるとしたら、その方法は?
文字がないのにどうやって読み聞かせをすればいいの?と、大人はとても戸惑うことでしょう。
ポイントとしていくつかあげてみましょう。
■これはなんだと思う?なにをしているところかな?と子どもに聞き言葉を引き出す
■イメージが膨らまないようであれば、もしかしたら●●なのかな?とヒントを与える
■お話しを追うように、親子で会話を楽しむ
■何度か読んで慣れてきたら、独自のストーリーを子どもと一緒に作って楽しむ
■すっかり慣れたら子どもに読んでもらう
このように、少しずつ絵本の世界を楽しんでみましょう。
子どもも初めはストーリーが文字で進まないことに戸惑うかもしれません。
読んであげる大人は、子どもの心に寄添い、「くまちゃんは何をしているのかな」「丸いボールが転がっていったね」と、言葉を添えてあげましょう。
そうすることで子どもは安心して言葉を発するようになるはずです。
また、言葉が出なくても子どもの心や頭の中では様々なイメージがふくらみ、想像の世界を楽しんでいるはずです。
子どもからの言葉や反応がなくても、「どうだった?」「おもしろいね」など決して感想を求めないようにしましょう。
これは文字のある絵本でも同じです。
こういった文字のない絵本にストーリーを付けることに慣れた頃に、全く今までと違うイメージで読み聞かせたり、子どもとお話しを進めてみるのも楽しいですよ。
子どもにお話しを作らせるには?
子どもの柔らかな想像力を膨らませながら、お話しの世界を楽しませるにはどのようにしたら良いのでしょう。
まずは読み手となる大人がその絵本を作られた意図や、作者の思いを知ることから始まります。
どんなお話なのか、作者は何を言いたかったのか、もしかしたらストーリーがない絵本なのかもしれません。
次に、子どもの想像力をかきたてるために、絵本の隅々までよく目を通し、イラストの中に作者の意図やストーリーのヒントを探します。
そして何度も繰返し読んであげることが一番大切なことです。
大人が何度も読み聞かせを繰り返すうちに、気づかなかったことに気づいたり、その本に慣れ親しんだ気持ちを抱いたとき、子どもから言葉が出てくるはずです。
それが、これまで大人が読み聞かせてきた言葉であっても構いません。
もちろん違ってもいいのです。
こういったことを繰返すうちに、子ども自身の言葉で語り、それぞれの感性、その時の気持ちによって変わるイメージの世界を楽しむことでしょう。
絵本の紹介
文字のない絵本はなかなかありませんが、文字がないことで有名な人気の絵本から、ぜひ子どもによんであげたい絵本まで、何冊かご紹介します。
①やこうれっしゃ
文字が全くない絵本ですが、イラストを見ているだけではっきりとストーリーがわかる絵本です。
夜行列車に乗っている乗客、それぞれのドラマが各ページがら伝わり、大人が読んでも楽しい絵本。
東京・上野駅から石川県の金沢までを運ぶ寝台列車です。
その時代の風景を、「この頃は電車の中に扇風機が付いていたんだよ」など話しながらすすめるのも楽しいです。
イラストがページいっぱいに描かれているのでじっくりゆっくりと観察することで、様々な発見があるはずです。
乗客の中には人間に化けた狐もいるのだとか…作者の遊び心に気づくのもうれしくなりますよ。
②どうぶつのおやこ
いぬ、くま、ねこ、さる、ライオンなど子どもたちに馴染みの動物の親子が描かれた絵本です。
もちろん文字はありません。
動物の毛並みやしぐさ、表情にリアリティがあり、時折写真なのでは?と感じてしまうほど。
文字がなくても動物の名前や鳴き声、かわいい、すき、やわらかそう、お父さんもいるね、など様々な会話を楽しめるので、絵本に慣れていないお父さんでも楽しく読んであげられますよ。
小さなお子さんから大きなお子さんまで、年齢を問わず読めるのもいいですね。
じっくりと丁寧に言葉を交わしながら、ゆっくりと読みたい絵本です。
③えんにち
表紙に惹かれ、この本を手に取るお子さんが圧倒的に多い絵本「えんにち」。
文字のない絵本ですが、親子の語り絵本としては楽しくわくわくする気持ちを共感できるオススメの1冊です。
懐かしい露店の並ぶお祭りへ出かけ、日が暮れるとともに人出が増えて、さらにわくわくする気持ちは時代が変わっても同じですね。
今度地域のお祭りへ行くときは、こんなお店があるか一緒に探してみよう、水風船も売っているといいなぁ、など盛り上がるはず。
夏祭りなどのイベントが近づいてきたらこの絵本を読むことで子どもの期待感を膨らませることもできるでしょう。
きっとたこやきが食べたくなりますよ!
④あかいふうせん
はっきりとした赤い色の風船が、ページを開くたびに様々なものに変化していく絵本。
新しい物語が展開していくので、子どもの好奇心を刺激し飽きずに最後まで読めます。
子どものイメージを刺激するような声をかけたり、お話しを作って語るなど、読むたびにストーリーに変化をもたらせて読むのにもぴったり。
読み慣れても、この赤い風船が次にはどんな形になるのだろうとわくわくした気持ちで見ることができるはず。
シンプルだからこそ、読むたびに心に響く感覚が変わる不思議でスタイリッシュな文字のない絵本です。
⑤かさ
女の子が赤い傘をさしてお父さんを駅まで迎えに行き、帰ってくるまでを描いています。
女の子の傘だけが赤く彩られているので、はっきりと目に移り、イラストの中に引き込まれますよ。
途中で出会った友達とお母さんとの会話、商店街のざわめき、雨が傘をたたく音、犬が身震いしてしぶきがはじける場面など細かな描写があります。
文字が無く、色もモノクロだからこそ感じられる情景や音、匂いを観察しながら感じられることでしょう。
今よりももう少しのんびりとした時代背景を感じるはず。
女の子の気持ちや移り変わる情景をお子さんと一緒に観察し、楽しめる絵本です。
⑥たのしい いちにち
赤ちゃんにも扱いやすい、厚手で小さいサイズのボードブック。
シンプルで美しい線と見やすい配色、丈夫な素材と角を丸くした安全・安心な絵本です。
「じどうしゃ」「どうぶつ」との3冊セットで出版されました。
朝起きてから夜眠るまでの一日が、シンプルで身近なイラストと共に流れていきます。
赤ちゃんの一日の生活に合わせて、かける言葉を変えてお話ししてあげると喜びますね!
言葉を少し理解し始め、物の名前や事の概念が分かってきたお子さんは、指さしをしたり、言葉を発したりし、親近感を持って見ることでしょう。
そして一緒に読む大人も、赤ちゃんとの生活を愛おしく思えるはずです。
赤ちゃん向けに絵本なのですが、幼稚園や保育園のお子さんにも人気の一冊。
手元に置いておきたいですね。
⑦絵巻えほん びっくり水族館
いつも楽しい絵本がたくさん「長新太」さんの絵本です。
じゃばら折りになって全ページがつながっていますよ。
表紙の大きな魚の口が水族館の入り口です。
絵本の中には子どもが大喜びしそうな名前の魚たちがいっぱい!
エビバス、オバケウオ、オジサンジュゴン、パンツイカ、バレエクラゲなど、本当に存在しそうで夢いっぱいの魚たちが元気に過ごしています。
ストーリーや物語りの文章はありませんが、1ページずつしっかり観察すると見えてくるお客さんの様子や表情がとっても楽しい!
子どもも大人も引き付けて離しません。
楽しい名前の楽しい動きをする水族館の魚たちにちなんで、お子さんも空想の世界を広げ、自分で考えた海の生き物を描いたり名前をつけたりするかもしれません。
親子で一緒に絵を描いてもいいですね!
長新太ワールドで思い切り楽しめる文字のない絵本です。
⑧おふろやさん
「これから、あっちゃんは、おとうさんと おかあさんとあかちゃんといっしょに おふろやさんにでかけます。」初めに書かれたこの一文のみで、あとはイラストだけが続きます。
現代のお子さんにも語り継ぎたい日本の風習「銭湯」を、しっかりイメージできる絵本です。
入り口、脱衣所、湯船、洗い場と、どの場面にも物語りがあり、思わずセリフを付けて読んでしまうはず。
絵本の画面いっぱいに詳細に描かれた絵は、先にご紹介した絵本「やこうれっしゃ」でもそうだったように観察すると様々な物語りが隠されていることに気づきます。
読み終われば誰もが銭湯に行きたい!という気持ちになるはず。
まとめ
文字のない絵本のメリット、読み聞かせのポイント、楽しい絵本のご紹介をしました。
初めは文字のない絵本は難しく感じたり、読み方がわからなく楽しめないかも?という印象があったかもしれません。
文字のない絵本は、子どもの想像力や観察力を広げ、語彙を増やし、お子さんと読み手のコミュニケーションを深く結ぶ素晴らしい絵本です。
時には文字のない絵本を選び、お子さんとの絵本時間をいつもと違った時間にしてみませんか。