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モンテッソーリ教育を通して考える育児とは?

これまでモンテッソーリ教育について、その理念や教育方法、子どもの発達についての考え方についてご紹介してきました。
また、実際に家庭でモンテッソーリ教育を取り入れるときのポイントもご紹介しました。
今回は、モンテッソーリ教育の考え方を活かした日常の育児の方法、声かけの工夫をご紹介します。

モンテッソーリ教育の考え方、教育法をもういちどおさらいしましょう!

「子どもには自ら成長する力がある」という観点から、周囲の大人が子どもが集中して興味のあることに取り組める環境と関わりを整えることによって、「精神的に自立をした、責任感と他人への思いやりが育まれ、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てること」を目的としています。

この大切な幼児期の教育や成長を促す方法の一つとして「教具」と呼ばれるモンテッソーリ教育独自のものを使い、子どもは「お仕事」をしてその力を伸ばします。

その教具は多岐に渡り、0歳児から取り組めるのもの数多くあります。教具は子どもの発達・成長に合わせて現れる「敏感期」に合わせて、子どもの興味や関心にあわせたものを用意します。

「子どもの自主性」「敏感期」と「お仕事」「自主的に楽しめる環境整備」をうまく組み合わせながら行うことがモンテッソーリ教育の根本でもあります。

こういった教具での活動の他に、子どもと関わるポイントがどのようなことがあるのでしょうか。

モンテッソーリ教育の考え方に添って、普段の子どもへの関りをご紹介しましょう。

叱り方

保護者とはなぜ子どもを叱るのでしょうか。
・子どもが危険なことをしたから
・子どもが繰り返し言ってもきかないから
・子どもが言うことを聞かないから
・子どもが人を傷つけたから

大人側には様々な理由があるでしょう。

モンテッソーリの教育法の中でも、危険なこと、いけないことをしたときはもちろん叱ります。はさみを振り回している、友達に意地悪をしている、車の来る道路へ急に飛び出すなど、こんなときは強く声をかけることもあるでしょう。

それでは、以下のようなときはどんな対応をしているでしょうか。
・ジュースをこぼした
・約束の時間になってもゲームを止めない、宿題をしない
・壁に落書きをした

こんなときは「もう!何やってるの?」「約束守れないんだね、知らないよ?」「どうしてこんなことするの!」と声を荒げ感情的になってしまうことが多いのではないでしょうか。

子どものしたことに対する怒りの感情が声の大きさや言い方、子どもを否定するような言い方になってしまうことが少なくないでしょう。
または、そうなるかもしれない、そうなるから気を付けるように事前に注意を促していたにも関わらず失敗している姿を見ると、「ほら、ごらんなさい」という気持ちから、感情的な叱り方になってしまうものなのです。

それでは、どのような関わり・叱り方が良いのでしょうか。

例:子どもが壁に落書きをしたときの関わり・叱り方

1.「何やってるの?」「どうして壁に書くの?お絵描き帳があるでしょう?」「どうするの、これ!どうしてくれるの!?」

2.「壁じゃないところに描こうか」「壁以外のどこに描けるかな?考えてみよう」

1の声かけと2の声かけの違いは目の前の子どもを見ているか、見ていないかの差があります。

1の声かけは、子ども自身ではなく、子どものした事実だけを見ていますが、2の声かけは子どものしたかった「行動」に目を向けているのがわかります。

子どもが叱られるようなことをする時は、それがいけないことだということを実は理解していないことが結構あるものです。大人にとっては知っていて当然、ダメに決まっているという行為も、子どもにとっては興味のあることであり、ダメだとは知らないからするのですね。

まずは子どもが何をしたかったのか考え、理解をしたい上で、それでもやはりダメなことであるならば、そのやってみたかったことを他の方法でできないか一緒に見つけてみることが大切です。

「壁に絵を描くと汚れてしまうし、お掃除も大変だから、お絵描き帳に描こう。大きく書いてみたいのなら、大きな段ボールやカレンダーの裏側でもいいよね」など、子どものしたかったことに寄り添い、提案してみましょう。

そうすることで、子どもは

・壁に絵を描いてはいけない
・絵を描くのはいい
・絵を描くのは紙にしよう
・大きく描きたければ、大きな紙に書けば良い

ということを理解し、壁に描くことはなくなるでしょう。

こういった対応はすぐに改善しないこともあります。怒鳴りつけて子ども自身を否定する叱り方なら怯えてすぐにやめますね。ですが、子どもは興味や関心、やりたかったことについては満たされていませんので、また繰り返してしまうこともあります。または、叱られた記憶が残っているので、隠れた場所で同じことを繰り返すこともあるでしょう。

子どもの気持ちが満たされるまで集中して取り組んだら、人の嫌がることやルールを破ることはしないという心を持ち合わせています。
子どもが自分で伸びようとする根本的な力を信じ、「こちらの気持ちを伝える」「してはいけないことを教えてあげる」と言う気持ちで、関わってみましょう。

思わず感情的な言葉が出そうになる時は、一呼吸おいて「どうしたの?」「そうだったんだね」と穏やかに聞くようにしてみましょう。子どもの気持ちを聞くという姿勢を見せるだけでも子どもは素直になり、こちらの話しも聞いてくれますよ。

このように大人が子どもへの視点を変えることで、子どもが今どんなことに興味を持ち、どのような発達をしているかということにも気づくことができます。
発達や敏感期を知ることで、子どもの行動やいたずら・愚図りやこだわり行動にも理解を持つことができ、育児が少しずつ楽になることでしょう。

褒め方

子どもを褒める時は、どのような声をかけていますか?
・上手!すごい!やるじゃない!!
・えらいな
・さすが〇〇くんだね
・お兄ちゃんだねー!お姉ちゃんだね!
・100点取ったからおやつは好きなケーキにしよう
・天才だわ

子どもが認めてほしそうにしているときは「すごいねー」と言うことが多いのではないでしょうか。褒めて伸ばす、叱らない育児、などの情報からなんでもすごいねーと安易に言ってしまう人も増えているかもしれません。
けれど、褒め方によっては子どもにプレッシャーをかけたり、不安を与えることもあります。がんばりたい、前に進みたいという気力を奪っていることも…。

「すごいね」と、本当に思ったからそう言って褒めたのでしょう。それはいいのです。何がすごいと思ったのかも具体的に伝えることで子どもの心に届くのです。

「すごいね。練習を毎日頑張ったからできたんだね。」と、褒める事象の過程や努力、がんばった点を具体的に褒めることが大切です。
さらには、自分ではどんなところに力をいれてみたの?何が一番苦労したかな?などと質問をしてあげることで更に子どもは喜ぶはずです。

がんばったこと、うれしかったことを大切な人と言葉で分かち合いたいと子どもは思っています。言葉がすくなくても笑顔を見せたり、抱きしめるなどで、十分幸せな気持ちになることでしょう。

上手~!すごいね、天才!
とっても集中して何度も練習していたね。自分ではどう思った?
さっすがーお兄ちゃんだね。さすが〇〇ちゃんだね
自分からできたね。お手伝いで一番がんばったことはどんなこと?えらいねー!
最後まであきらめないでできたね。

このように子どもができたことを、具体的に言葉で伝えることを意識し、褒め言葉にしてみましょう。
えらいね!すごいね!!など、ちょっとおざなりな褒め方を繰り返すことは、褒められ依存症になることがあります。褒めてもらえないと自信が持てない、誰かが褒めてくれないと自分も自分を認められない気持ちになっていくのです。褒められないと落ち込み、自分を責め、不機嫌になったりもするのです。

また、取り組む・努力することに興味を持てず、無気力になったり楽しみを見いだせない子どもにもなります。

子どもの話を積極的に聞こう!アクティブ・リスニング(傾聴)の姿勢とは?

忙しい毎日は、子どもとの関わりの中で、「叱る・褒める」という声かけだけが増えてしまいがちです。
子どもの他愛のない話をしっかりと向き合って聞いてあげる時間を持っているでしょうか。
うなずいたりリアクションしながら話を聞き、意見したりさえぎったりせず、結論を出さず、時には子どもの話しを繰り返したりまとめて言い換えてあげたり、途中で話を変えず最後まで聞いてあげる姿勢を「アクティブリスニング=傾聴」と言います。

子どもの話したい気持ちをしっかりと受け止めながら興味を持って聞いてあげることは、子どもの自信を育て、親子の信頼関係も深まります。子どもは自分の考えを話したくなり、自分で解決方法を見出したり、前向きな心構えを身につけるようになるのです。

こうした子どもの心の動きは、しっかりと受け止めてもらい、見守り聞いてもらっている安心感から生まれます。

自分から問題を解決する能力を向上させ、自立していく、モンテッソーリ教育の目指す子ども像でもあります。

子どもの話をいつもしっかりと聞くのは、忙しい保護者には難しいものですが、食事の時間やお風呂の時間、眠る前など一日一度くらいは、話を積極的に聞く時間を持ちたいものですね。

保護者の意識を変えて行こう

モンテッソーリ教育の理念を根底に踏まえた、子どもとの関り方について、特に叱り方・褒め方、話しを聞くときの保護者の姿勢について詳しくご紹介しました。
子どもは保護者の保有物でもなければ、自分の思い通りにできる存在でもありません。
保護者とは別の人格を持つ一人の人間です。

 

子どもの存在を尊重し関わることで、視点が変わり、これまで問題と感じていたことも原因がわかったり、子どもの本当にしたかった行動が見えてくるはずです。

モンテッソーリ教育の関わり方を取り入れ、ぜひとも子どもの成長に寄添った育児をしていきましょう。